秘密のMelo♪y⑤*NY編*
たじろぐあたしを、にこにこ見つめながら連れて行こうとする彼女。
「ちょちょちょちょちょ、待ちたまえ!? 待ちたまえさかもっちゃん!?」
「は…? ……あっ! だ、旦那様!」
「今気付いとる!?Σ」
思いっきり衝撃を受ける父様がちょっとかわいそうに思えた。
だって坂本さん…本気で気付いてなかったからね、自分の主の存在にさ。
まあ、とはいってもこの人は…あたしの専属。
坂本家と神崎家からは、他にも何人かうちに来てるけど、お兄ちゃんと坂本さんの二人はあたしの専属だ。
野木さんといい、みんななぜか父様達を差し置いてあたしに忠誠を掲げている。
…いつの時代だよホントにもう。
「ふっ…。いいんだよいいんだよ。さかもっちゃんはまおのお世話係だもんね…。僕なんて二の次三の次だよね…」
「そっ、そのようなことはございません! も、申し訳ありません…」
「ふっ……」
わざとらしく落ち込む父様のそばで、おろおろと気にする坂本さん。
「いいよほっといて」
「は……しかし…」
「いいから。…ねえ、お茶は?」
「はっ! そうでした! あ、皆様もどうぞお入りください。間取りは本邸と同じものとなっておりますので、ご自室のほうへどうぞ」
四十五度くらいに頭を下げて言う彼女は、本当に優秀だ。
しかももう父様のことは忘れてる。
「本邸の間取り……忘れた」
「忘れたて、自分の生まれ育った家やんΣ」
そりゃまそうだけど。
まあ、入ったら思い出すでしょ一緒なら。
「…そりゃ方向感覚があればの話だぜ」
「……」