秘密のMelo♪y⑤*NY編*

再起不能。

左手の再起不能。

それが何を意味するか……。

“あたし達”にとって、それが一体どういう意味なのか。

考えたくもなかった。


すべてを、失った。


そう思った。


かっくんも…あの人との一番の繋がり、バイオリンも。

失った。


生きる気力を失う…というが、それどころではなかった。

死ぬ気力さえも浮かばなかった。

ただ、大きな二つの現実から無理やり目を背け、逃げて逃げて…逃げながら暮らしている。

ただ、息をしている。

それだけ……。

それだけだった。


もしみんながいてくれてなかったら、あたしどうなってたか分からない。

みんなが…梨音達がいてくれて。

父様もああしていつも通り馬鹿で。

坂本さんも、すべてを知ってて何も言わずにそばにいてくれる。

それがすごくありがたくて…。

同時に、すごく痛かった。


『どした? マヒロ』


『うん…』


『疲れた?』


『……うん』


『まあ…。ごめんね気付かなくて…ほら横になって』


心からと分かる心配。親切。

ありがたくて痛い…だけど温かい、みんなの心。


ごめんね…。


< 158 / 271 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop