秘密のMelo♪y⑤*NY編*
再起不能。
左手の再起不能。
それが何を意味するか……。
“あたし達”にとって、それが一体どういう意味なのか。
考えたくもなかった。
すべてを、失った。
そう思った。
かっくんも…あの人との一番の繋がり、バイオリンも。
失った。
生きる気力を失う…というが、それどころではなかった。
死ぬ気力さえも浮かばなかった。
ただ、大きな二つの現実から無理やり目を背け、逃げて逃げて…逃げながら暮らしている。
ただ、息をしている。
それだけ……。
それだけだった。
もしみんながいてくれてなかったら、あたしどうなってたか分からない。
みんなが…梨音達がいてくれて。
父様もああしていつも通り馬鹿で。
坂本さんも、すべてを知ってて何も言わずにそばにいてくれる。
それがすごくありがたくて…。
同時に、すごく痛かった。
『どした? マヒロ』
『うん…』
『疲れた?』
『……うん』
『まあ…。ごめんね気付かなくて…ほら横になって』
心からと分かる心配。親切。
ありがたくて痛い…だけど温かい、みんなの心。
ごめんね…。