秘密のMelo♪y⑤*NY編*
言いにくそうにした挙句口をつぐんでしまった野木さんを見てすぐに気が付いた。
そうか…。
あたしが、結婚したから。
正式に五十一代目として受け継いではないものの、次代の人間がもううちに入ったからには、旦那様と呼ばれるのは…あの人…か。
……てことはあたし、奥様とか呼ばれるわけ!? 母様みたいに!?
「……あ、ありえない…」
…いや、考えまい。
余計なことは考えまい…!
「では、今度こそよろしいですか?」
「うんいいよ」
ぼけっとしてるあたしの代わりに父様が答え、車は出発した。
はあ…。
今日も痛いことするのかな…嫌だな…。
「我慢しなさい。おかげでずいぶんと動くようになったじゃないか、その手」
「……」
ずいぶんと動くように…ね…。
それは手首だけだ。
手首が若干回るようになっただけで、指はほとんど動かないまま。
仮にこれから先リハビリを続けたとて―…。
―…もう、バイオリンはできないんだもの…。
だったら別に、あんな痛いことしなくていい。
このままでいいよ。
あたしはそう思うのに、父様はそれを許さなかった。
治るところは治しなさい…って。
「それに今日はリハビリではないぞ」
「え?」
「検査するだけだい」
「……」