秘密のMelo♪y⑤*NY編*
『…ごほん。いや別に、なんでもなかったけど』
『検診だったんでしょう?』
『うん。…“よし、異常なし❤思った通りっ”…って言われた』
思ってたんならいっそ検診いらないじゃん。
なんてちょっと思ったけど、まあそうはいかないね。
『リハビリ順調?』
『う…うん。まあ…』
ひょこっと話に入ってきたリジュの一言に、一瞬だけちくっと胸が痛んだ。
まだ、みんなは知らない。
あたしの手…もう、治らないこと。
バイオリンが弾けないこと。
あたし自身、考えないようにしてるから、人に言いづらいっていうのもある。
だけど…いずれにせよ、言わなきゃならないことだよね…。
『はあ…』
そう考えると気が重くって。
誰かに聞いてほしい些細なつっかえがどんどん大きくなっていって。
ふと気が付くと、いつだってあたしの頭にはあの人の顔が浮かんでいた。
『大丈夫マヒロ』
『え?』
『あたし達邪魔なら…』
『あ…違う』
そんなあたしの様子を、体調が悪いと勘違いしたハディが、心配そうな顔で立ち上がる。
慌ててかぶりを振りながら、口の端をわずかに上げた。
『…そう? 無理しないでいいのよ』
『ううん、本当。それにもう、結構なんともないのよ』
さすがに、体力はだいぶ回復してきた。
食べられるものも増えてきたし、もう大丈夫。