秘密のMelo♪y⑤*NY編*
だけど心が追い付かなかった。
少しずつ回復していく体とは逆に、色んなことから立ち直らなきゃって思う心は、どんどん深みへはまっていく。
あたし…このまま、形のない不安と恐怖に呑まれてしまうんじゃないかって。
色を失って空っぽになった心が、そのまま囚われ続けるんじゃないかって。
…たまに、こんなことはあった。
特に母様が亡くなってから。
体に纏わりつくかのような、言いようのない不安。
なにがというわけでもなく、ただただ怖かった。
そんなとき絶対に……絶対に、あたしは一人じゃなかった。
『…俺がいる』
…そう言って、とても優しく抱きしめてくれてた人がいた。
あたしはあの温もりにひどく安心して、スッと不安や恐怖は消えていったんだ。
いつだって……。そう、いつだって。
あの人はあたしのそばにいた。
それだけでとても救われて、なんでも大丈夫なような気がしてた。
…なのに。
……なのに、その彼がいない。
それが、不安や恐怖をさらに掻き立て、おさめてくれる温もりを求め、それらはどんどんあたしの心を引きずり降ろしていった。
『あー腹減った…。なぁシュンなんか持ってねぇ?』
『ねーよ』
『なんだよーケチー』
『ケチで持ってねーんじゃねェよΣ』
「……これ、たべる?」
『食べるっ❤』
……子犬みたい…。
アッシュとシュンの漫才でハッと我に返ったあたし。
すぐそばに置いてあったクッキーの缶を差し出した。