秘密のMelo♪y⑤*NY編*
こちらが心配になってしまうほど、抜け殻のようになるだけで泣くことすらしない。
「それやのに自殺図ったって…」
「…ああ」
きっと僕達には計り知れない悲しみなんだろうと思う。
苦しいんだろうと思う。
今そばにいるのは自分達なのに、自分達にはなにもできない。
ほんの一欠けらも、苦しみを取り除いてやることができない。
それどころか…悲しみは、日に日に増していくばかり。
どうしていいのか本当に分からなかった。
「ほんまなんやろか?」
「え?」
「あの楓がやぞ? あんだけ溺愛しとったまおちゃんを…」
まおちゃんを……置いて逝くはずがない、と…。
そう言いたいわけか…。
「…そりゃあね。みんなそう思ってるよ」
「……」
というより、みんなが願っていることだ。
楓のまおちゃんへの想いを信じたい、とか。
まおちゃんの楓への想いをなんとか拾ってほしい、とか。
みんなが願っていることだ。
「僕は…さ」
僕は……あんな夫婦を見たことがない。
うちの家庭はあまり円満ではなく、昔から両親は不仲だったし、中学生の時に離婚している。
そのときすでに家を出て寮暮らしをしていたのもあって、あんな風に愛し合える夫婦がいるなんて知らなかった。
いや…ひょっとするとあの二人がやはり、普通より少し違うのかもしれない。
だけれどなんにしても、事実だ。
互いに強く想い合っていたのは、まぎれもない事実。