秘密のMelo♪y⑤*NY編*
病院に向かうまでの道のりで、ずらっとショウウィンドウに並べられたテレビを見かけた。
当然やっているのは真裕のことだ。
さすがに事故そのもののことはそこまで取り上げなくなったが、真裕と……そして楓のことを。
今もずっと、取り上げ続けている。
『……』
『警察、及び自衛隊の懸命の捜索も虚しく、楓氏の姿は一向に見当たりません』
『…無責任よね。そんな風に毎日毎日言わなくたって…』
『それが仕事なんだ。仕方ねェだろ』
楓の死は、実はまだ発表されていない。
俺達自身が……親父さんが信じたくないというのももちろんあるが、すでにこれだけ取り沙汰されているところへそんなことを言えば、それこそ社会問題になる。
元々あいつ自身相当腕のある有名なバイオリニストだったし、活動が目立たなくなってからも真裕との結婚やらなんやらで結局その名を馳せ続けている。
まして藤峰家は、様々な面から世界中に影響の大きい家だ。
そんな家の五十一代目を担う一人が。
次期社長となる男が亡くなったとなれば、ただじゃあすまない。
影響力だけで言えば、それこそ天皇一家並みだ。
それだけの歴史がある。
真裕の母親のことも世間に知られていないし、恐らくこれからもずっと極秘でいくんだろう。
相当のことがない限り…。
『…さ、行くぞ』
ふと目を伏せて物思いに耽り、つらそうな表情で画面を睨む四人を促した。
『俺って神様信じる方じゃねーんだけど』
『ああ?』
『今日から信じようと思う。崇拝しよう。てか教祖様に…』
『方向性ずれてきてる。…てかそういうのって、今日から信じるとかってするもんじゃないでしょ』
『そおかな』