鏡の向こう
―伊織side―
「だいたい、
私のこと恋愛対象として見てくれる人なんて、そうそういないから。」
『鈍感……。』
満足そうにしている紗香を横目に、
私は思わずため息を吐きながら呟いた。
紗香のこと狙ってる狼(男)なんて、
その辺にうじゃうじゃいる。
本人は全然無自覚だけど、
紗香は相当可愛い。
真っ黒な髪の毛、
さくらんぼ色の唇に、
桜色のほっぺ。
女の子なら誰でも憧れる、
抜群のプロポーション。
まさに言うことなしの、
私の自慢の親友。
……まぁ、
無自覚なのが、玉に瑕(きず)なんだけどね。