桃染蝶
「カナメ、悪かったな」

正二に頭を下げてみせるのは
最近、組に入ったばかりの
兵藤 要
(ひょうどう かなめ)

まだ、ほんの子供で、正二が
預かっている。

「サオリ、こんなところまで
 何しに来た?」

パチン・・・

正二の頬を思いっきり
引っ叩く音がする。

女は、正二の胸を何度も
強く叩いた。

「サオリ、やめろ
 やめないか」

叩きつける手を掴む正二を
睨みつけて、女は言う。

「何しにきた?
 
 よく
 そんな事が言えるわね
 
 連絡も一切、よこさないで
 逃げるつもりだったん
 でしょう?」

「違う、そうじゃない
 
 サオリ、落ち着け」
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