桃染蝶
その傍らに立ち、手の甲で
涙を拭う男性。

悲しむ男の背に、そっと触れ
寄り添い、声をかける女性。

「イオリ
 
 お義父さんの最後に
 間に合って良かったね」

「ああ・・・」

そう、この庵という男は
亡くなった正二の息子。

正二は、愛する者達に
見守られ、天に召された。

病室の窓を打ちつける雨音。

晴れ渡る空に、突如激しい夕立

「イオリ、スミレちゃん見て
 ショウさんが泣いてる

 きっと、お兄さんに会えた
 嬉涙ね・・・」
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