桃染蝶
帰り道、沙織は涙を流す。

「イチヤ、もういいよ
 本当、もういいから
 勘当ならそれでいいよ
 
 お父さんなんて私の事
 何にもわかってないくせに
 自分の体裁や、跡継ぎの
 事ばっかり気にして・・・」

「サオリ、落ち着け
 聞くんだ

 明日も明後日も 
 明々後日も、毎日でも
 俺は、おまえの親父さんに
 会いに行ってやる

 だから、勘当されてもいいだ
 なんて絶対に思うな」

「イチヤ・・・?」

「おまえを下さいと何度でも
 俺は頭を下げてやる
 
 そして、おまえを必ず
 俺だけのものにする

 俺の、この手には
 俺が望んだ物
 その全てがある
 
 この俺に不可能はない」

自信ありげにそう話す、一夜に
沙織はほっとしてる。

「ほんとう?

 イチヤ
 
 貴方は逃げない?」
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