桃染蝶
ここは、高月組本部事務所。

そこに集まるは、たった数名

「アニキ、正気か?

 収集をかけずに、これだけの
 人数で乗り込んで、いったい
 何ができる?
 
 今までやってきたことが全部
 水の泡じゃねえか

 もう少し待ってさえいれば
 奴等は必ず落ちるはずだ
 
 そう言ったのは、アニキ?」

「そうですよ、親父
 どうしたんですか? 
 
 あなたらしくない」

唇から洩れるは、白い煙。

「俺らしくない

 俺らしいって何だ?」

地を這うような深く、低い声で
一夜は問いかける。

「アニキ、どうかしたのか
 何を急いでる?」

一夜は吸殻を灰皿に
押し付けながら立ち上がる。
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