桃染蝶
庵は、桃色の空に降る雨を
見つめながら、ある日の父
正二の事を思い出す。

お見舞いに訪ねた、あの日
正二は病床で、今のように
静かに眠っていた。

痩せ細り、一回りは小さく
なった体、昔の貫禄は無い。

そんな父の姿を見下ろす庵の
視線に気づいたのか、彼は
ゆっくりと目を覚ます。

「オヤジ、ごめん
 起したか?」

「・・・」

目覚めた正二は、じーっと
庵を見つめる。

「シュリ?
 シュリなら今、すみれと
 ・・・」

「アニキ・・・わざわざ
 迎えに来てくれたのか?」
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