桃染蝶
全く、組長の座に興味を示そう
とはしなかった。

ただ、一夜のいないこの場所に
自分が居る意味を探していた。

そして、ある想いに駆られる。

本来、この場所を去るべき
だったのは、正二

おまえなのだと。

「イノウのアニキ
 話、聞いてますか?」

「いやっ、すまない
 何だ?」

そんな初馬をあざ笑う、正二に
ついた男達。

「そんな調子で、この高月が
 継げんのか?」

「なあ
 イノウ、どうだろう?
 ショウに、跡を継がせては」

「何、言ってやがる
 
 親父に絶対の信頼がある
 イノウの方が適任

 おまえだって本当は
 わかってんじゃねえのか
 もし、親父が跡目を決める
 なら、必ず、ハツマを押す」

「だろうな
 でも、当人さんは、どうだ」
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