桃染蝶
だけど、俺は決してその
最後の場面から、この目を
背けない。

兄貴の瞳がゾクゾクする程
に冷酷になる。

冷ややかな極上の痺れる
視線・・・

兄貴は男の利き腕を容赦なく
へし折ったのだった。

男は、失神。

男の口から取り出した兄貴の
指には、男の歯形がくっきり
噛まれた痕が、血で滲む。

兄貴は、その指をペロリと
舐めた。

「でっ
 
 おまえ等はやるの?
 やらねえの?」

喧嘩の一部始終を見ていた
他校の生徒は皆逃げて行く。

兄貴に適う相手など
この世のどこにもいない。

俺は、兄貴には勝てない。

貴方には、成れない・・・
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