桃染蝶
私の瞳から、零れ落ちる涙
に一夜が触れる。

「ほらっ、泣くなよ
 
 あっちも泣きそうじゃん」

困ってる一夜の顔を見て
私は笑ってしまう。

「笑ってんなよ」

目覚めた庵の泣き声が部屋中
に響く。


愛していない?

私は、誰にも愛されない。

そうじゃなかった。

私は、愛されていた・・・

あの日のイチヤにも

あの日のショウにも

確かに愛されていた。
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