桃染蝶
一夜は、顔を左右に振った。

「ごめん、母さん

 カヤが手紙の最後に
 俺と沙織以外、家族には
 見せないでほしいって・・」

「そう・・・」

「父さんと母さんの娘に
 生まれて良かった
 親不幸でごめんなさい
 
 そう、伝えてほしいって
 書いてあった」

「そう、ありがとう
 親不孝だなんて、そんな
 ・・・
 
 二十歳になる前に家を
 飛び出して音信不通
 
 私達の方こそ、カヤコに
 何もしてあげられなかった」

暗い病院の廊下

悲しみに打ちひしがれ
泣き疲れた者達の元に
一人の男が現れた。

息も荒く、慌てた様子で
現れたのは正二。

「ショウ」
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