桃染蝶
「母さん、父さん

 アニキ
 これは、いったい・・・」

一夜は、正二に声をかける事
なく、黙ったまま突き刺さる程
に冷たい視線を投げかけた。

『ショウ、今手出してる女
 泣かせてみろ
 
 弟でも、お前を殺る』

赤く腫れた瞳の一夜。

貴方は、俺を殺意に満ちた瞳で
見つめる。

正二は、その瞳に花夜子が
死んでしまったことを知る。

「ショウ、ほらっ、早く
 カヤコに会っておやり」

父の声に後ずさりする正二。

「ショウ、遺体の損傷は
 思った以上に激しい」

「うるせえよ

 遺体?何言ってんだよ

 カヤコは、今もどこかで
 生きてる・・・

 うそつくな」
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