桃染蝶
錯乱状態の正二に、父親は
強い口調で言う。

「カヤコは死んだんだ
 
 ショウ、しっかりしろ
 
 カヤコの死から目を 
 背けるな」

その声に、正二は我に返る。

「そんな・・・
 
 俺は、なんてひどいこと
 取り返しのつかないことを
 カヤコに・・・」

涙を浮かべ膝をつく正二の腕
を掴みその場に立たせてあげる
父親。

「ショウ、おまえとカヤコの間
 に何があったかは知らないが
 
 カヤコの自殺の原因は
 おまえじゃない

 病、らしい」

「病?」

「そう
 カヤコは余命幾許もない
 病気だったらしい
 
 あの子は誰にも病気の事を
 言わずに病と闘い、そして
 自分で自分の人生の幕を
 下ろした・・・」
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