桃染蝶
正二は、煙草を銜え人ごみ
に紛れて行く。

荒波に揉まれる様に消えゆく。

俺の背を見つめる少女の瞳は
どことなく花夜子に似ていた。

現在の彼女、正二の妻である
千夏(朱莉)が見つめる瞳には
正二の遺影。

千夏は、窓の外を指差した。

「ショウさん、見て?
 
 今日も夕焼け空は
 ショウさんの好きな
 桃色だよ」


桃染色の蝶々

今日も

何処かで

ゆらゆら

ひらひら

舞う・・・
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