桃染蝶
正二の瞳に映るのは
若かりし頃の亡き義兄
高月一夜の姿。

義兄の瞳に重なる
過去に愛した女の面影

「オヤジ?」

「老いぼれの、この俺も
 戻れるのか・・・?

 戻れるなら・・・
 戻りたいな」

庵は、何も答える事ができず
ただ黙って正二を見つめる。

「アニキ
 
 アンタの、その目
 相変わらず、痺れるねえ」

『お兄ちゃん・・・
 
 今すぐ逢いたい

 あなたに』

懐かしい声が、聞こえる。
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