桃染蝶
一夜は、うつ伏せのまま腕を
伸ばして手探りで布団を探す。

そして手に掴んだ布団を
もう一度、羽織る。

「ああ、いもうと」

「妹?
 
 うそ、貴方には
 弟さんしかいない・・・」

「いるよ

 妹」

「うそ、うそばっかり
 
 どうせ、また店の女に
 言い寄られて、手
 出したんでしょう?」

ヒステリックな声をあげる女

「いい加減にしろ
 
 おまえ、うぜえ
 
 わかったなら
 さっさと消えろ」

布団を深く被る、一夜。
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