藤井先輩と私。
「あの人…かっこいいね。あの人がどうしたの?」

私がそう聞くと、ユカは長いため息をついたのち、


「委員長」


と答えた。


私は周りを見渡して、委員長をさがす。


「そういえば、まだ委員長来てないね」


委員長の席は、空席。

マジメな委員長が遅刻するわけがない。
今日は休みかな。


そう思っていたら、




「委員長!!!」



とユカが、また強くその単語を発した。


「え?何?」

「だから、あの人、委員長なのよ」


私は、もう一度女子に囲まれる男の人を見る。

この人が委員長ね。なぁんだ。



この人が……い…委………って




「委員ちょおおおおぉおぉぉぉぉ!!!!!?」



「陽依声大きいから!」


ちょっ…ちょっと…ちょっと待ってよ。

え?あれがこれで、これがあれで……。


「何かの間違いじゃ…?」


ワタワタと頭を抱えてパニクる私。

だって、あの人髪の毛サラサラだよ?
委員長もさかったじゃん!

あんなに色気ないよ。
委員長影薄かったじゃん。

あの人、モテモテだよ。
委員長は花しょってないし!


それが…同一人物?



キーンコーンカー……


チャイムが鳴り、担任が入ってくると、ユカはうつぶせになったまま「昼休みゆっくり話すから」と、そう言った。

まだ、信じられない。

そう思っていた私を、否が応にも納得させるように、あの男の人は自然に委員長の席につき、号令をかけた。


「きっ……起立…」

その声はやはり、気弱な委員長のもので、いつもと違っていたのは、クラスのみんなが委員長の言うことを素直に聞いていたことだった。


  



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