藤井先輩と私。
「もしかして…ブラコンなの?杏奈ちゃん」
私がそう言うと、杏奈ちゃんは顔を真っ赤にして
「ちがう!あたしは正真正銘悠太のか・の・じょ!」
と言い張った。
「陽依、杏奈は正真正銘のブラコンや」
「ちがうもん!悠太」
「杏奈!お兄ちゃんと呼べ。もしくはお兄様と呼べ」
「いや!」
ツインテールを左右にふわふわと揺らして拒絶する杏奈ちゃんは、やっぱり可愛かった。
こうやって杏奈ちゃんと藤井先輩2人をちゃんと見てみると、目元や鼻の形とかそっくりな部分がいっぱいあって、兄妹なんだなって思える。
勘違いした私が恥ずかしくなった。
「あ、陽依のど渇いたやろ?茶でええか?」
「えっ?お構いなく!もう帰りますから」
「そーや、帰れ帰れー」
「こら!杏奈!」
「ブー」
窓の外は、もう薄暗くて、夜になる一歩手前まで来ていた。
「じゃあ、送るわ」
「え?良いですよ。歩いて帰れます」
「でも一人歩きは危険や」
「大丈夫です」
ここから駅が近いし、電車で帰れば家はすぐ近くですからと付け加えると、藤井先輩は
「じゃあ、駅までなら送ってもええか?」
「…いいんですか?」
「ダメ!」
「杏奈はもう寝る時間だ」
「まだ6時半や!こんな時間に寝る人なんているわけないやろ。悠太が駅行くんやったらあたしも」
「それはダメ」
藤井先輩は、暴れる杏奈ちゃんを軽々と抱っこすると、杏奈ちゃんが使っているらしき部屋に連れて行った。
数秒後、「ほな、行くで」と藤井先輩が戻ってきて、私と先輩はマンションを出たのだった。