藤井先輩と私。
「陽依だから聞いてほしいんだ」
真剣な先輩の目と声。
まっすぐと私を見つめる瞳から目をそらせなくなった。
「聞きます。聞かせてください」
私がそう言うと、先輩は大きく息を吸って、深く息をはいた。
「………陽依、さっきから気づいていると思うけど。俺は根っからの大阪人じゃない。元々はこっちの人間だった」
あれは、俺がまだ幼かった頃。
自我が目覚めてまもない、いたいけな子供だったあの頃。