藤井先輩と私。
それから数日後。


いつものように親父が映るテレビを見ていた日のちょうど昼ごろ。


「まぁ、もうこんな時間。悠太、杏奈おなかすいちゃったね」

「あーい」

「ママ!オムライス食べたい!」


「分かった。オムライスね!悠太は冷蔵庫からケチャップ取って何を書くか杏奈と考えてて?」


「はーい」




いつものなんでもないお昼。


いつも同じように、3人でご飯を食べて、笑って、親父の映るテレビを見る。


そんないつもが、今日は少し違っていた。








「ゴホッ…ゴホゴホッ」



「ママ?」



せき込む母親の声がキッチンから聞こえて、不安になり駆け寄る幼い俺。


「どうしたの?!ママ?」


「だっ…大丈夫よ…ゴホッ…」


つらそうにしゃがみこむ母さん。

口に手を当てて、苦しそうにせき込んでいた。


「でも、ママ…それ…ケチャップ?」


「え?」


母の手にはべっとりと、赤い血がついていた。

その血に気付いていなかった母さんは、自分の手を見ると小さな悲鳴を上げる。


咳のせいで息の上がったのを、ゆっくりとおさえると、母さんは手を水道で洗い、口をすすいだ。


「ママ?」


「大丈夫よ…大丈夫…」


自分に言い聞かせるように呟く母さん。

「さっ、ご飯食べましょ。このお皿テーブルに運んで?」

「はーい」

おいしそうなオムライスが乗せられたお皿を持つと、テーブルに向かう。

それから、三人でオムライスをたべると、いつものように過ごした。



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