藤井先輩と私。




「ほら、できたわよ」


お母さんが肩をポンポンと叩く。


目を開けると、ボサボサだった髪は頭の上でオダンゴでまとめられている。


そして大きな赤いリボンがついていた。



「題して、“陽依スペシャルおリボンのせ”よ」



あ、昨日の夜の特番の影響か。
7時から2時間スペシャルで【アゲ嬢特番】やってたからなぁ…。

ミーハーのお母さんらしい。


「本当はもっとアゲアゲにしたかったんだけどね。お母さんまだまだ勉強不足で…ごめんね陽依」


アゲアゲって…。

「お母さんありがとう!リボン可愛いし!」


「そう?良かったわ!ほら、お父さんにも見せてらっしゃい」

「うん、でも時間内からこのままいくね!帰りは遅くならないようにする!じゃ行ってきまーす」


お父さんに浴衣姿なんか見せたら、またうるさそうだからね。

私は急いで玄関をでた。

うーん。

間に合うかなぁ……。










――――――――――
――――――――

――――

――






「なんだ?陽依はどうした?」

陽依を送り出してリビングに戻ってきた母に、陽依父は陽依の姿をさがす。


「もう行きましたよ?」

「なに!?俺はまだ陽依の浴衣姿みてないぞ」

「帰ってきてから見ればいいじゃないの」

陽依父は、深くうなだれた。

「……まさかとは思うが…お祭の相手は、男じゃないだろうな?」

その言葉に、母はにっこりとほほ笑んで、

「さぁ、どうかしらね」

と意味深に言うのだった。




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