藤井先輩と私。
突然、左手を掴まれた。


なに!?

またナンパな人!?


どうしよう!

私はあわてて左手を振り回した。


「離して下さい!」



「俺や!」






え?…



掴まれた左手を目で追っていく。


すると、その先には藤井先輩の顔があった。




「せんぱい…?」



「よかったぁ、陽依やったか。やっぱり」



先輩はそう言うと、すこし人がまばらなところまで私を連れて行ってくれた。


「駅前は人多いなぁ。祭りやもんな」


「先輩!どうして私の居場所分かったんですか?」


あんなに人が多いのに、私の声小さかったのに、どうして?



「陽依、俺の名前呼んでくれたやろ?」



あの声が聞こえたの?


「先輩すごいです」


「そーか?俺は陽依の声やったら、何百メートル、何千メートル離れた場所からでも聞こえるで」


そう言って、優しく笑う先輩はとても、とても、まぶしかった。

頬が熱くなってくる。


なんでだろう。

あ、そっか夕日のせいだ。

傾き始めた夕日が私のほほを染めてるんだ。



 

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