藤井先輩と私。
それから電話番号を交換した私と先輩は、駅前から大通に続く道を歩き始めた。


大通りのは歩行者天国になっていて、ところせましと屋台がならんでいて、おいしそうな香りが鼻をくすぐる。

ダンス発表が行われているステージや、カラオケ大会があるステージもあって、リズムのいい音楽がまた、祭りの空気を盛り上げていた。


「先輩、まずは何をするんでしたっけ?」

この前帰りながら計画を立てていたことを思い出してきいてみた。

「そーやな~!あ!あれしよ!あれ!」

先輩は、一つの出店を指差した。



「あっ!ヨーヨーすくい」



そういえば、この前一緒に帰ったとき、



『私、ヨーヨー好きなんですけど…なかなか自分では取れなくて…いつもお店の人が気を使ってくれて私に好きなヨーヨー選ばせてくれるんです』


『そおなんか?』


『はい。でも、やっぱり自分で取りたいじゃないですか。お店の人からもらうのちょっと悔しいんです』


『うーん…じゃあ、俺が教えたるわ!一緒に頑張ろ』

『はい!』



そんな会話をしたことを思い出した。

私って本当に不器用だから、すごくお金無駄にしちゃいそうだけど、今度こそヨーヨーをすくってみせる!




「お客さん、1回100円だよ」


つるつるに磨き上げられたスキンヘットにねじり鉢巻きを巻いた、人の良さそうなおじさんが、白い釣り針のついた紙を私と先輩に渡す。


「よーっし!俺が先に見本みせたるわ!」


先輩はそう言うと、真剣な表情で青いヨーヨーに釣り針を垂らした。


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