藤井先輩と私。
近くのベンチに女の子をすわらせて、手当をする。
絆創膏はなんとか足りて、ほっとした。
「……っ…ひっく……ふぇぇ…」
ほっとしたのもつかの間、女の子は急に顔をゆがめて泣き始める。
どうして?
「どうしたの?まだどっか痛い?」
そう言って、女の子のほっぺに伝う涙を手ですくった。
まだ、ひっく、ひっくとしゃくりあげて泣く女の子。
一時たって、すこし落ち着くと、女の子は涙を拭わずに、
「んとね……これは、わたしの涙じゃないよ……っ…」
と言った。
どういうことか分からなくて、
「え?」
と聞き返すと、衝撃的な言葉が返ってきた。
「だって、きみが泣くの我慢してるから、その涙がわたしにうつったんだよ」
なんで分かってしまうんだ。
初めてあった女の子なのに、どうしてきみには僕のこころがわかってしまうんだ。
幼い俺の手は自然に、女の子の体を引き寄せていて、ぎゅっと抱きしめていた。
なんて優しい子なんだろう。
どうして分かってくれるんだろう。
俺は、声を押し殺して泣いた。
抱きしめてるきみに感謝して。
「…ありがとう」