藤井先輩と私。

「せんぱーい、大丈夫ですか?」

とりあえず、外の園芸コーナーの売り物の屋根付きベンチの方へ移動し、先輩を座るようにさとした。


全然しゃべってくれない。

顔もさっきから同じだし。

もしかして、先輩気分悪いのかな。


「あの、先輩?」


もう一度、名前を呼ぶと、


「ほんまに、キミなんか?」


「はい。わたしは私ですけど」


藤井先輩は天然な人なのかもしれない。


それから少し黙ると、先輩はやっと普通になった。


「驚いたわ、いきなりぶつかってくるし」

「私も驚きましたよ」


「なんで、ホームセンターに?一人で買いもんか?」

「いえ、私は雨宿りに」


空を見上げると、まだ曇り空で雨がやむ気配はない。
もう少し、ここで雨宿りしなくちゃ。

「運命としか思えへん…」


「え?なんか言いました?先輩」

「い、いや、キミに偶然会うなんて今日はいい日やな思てな」

先輩は雨雲を見つめて言った。

 

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