藤井先輩と私。
「先輩ってすごいです!」
「え?」
「あのベンチ最高に座り心地いいし、青空あるし、いい感じの木陰にあるし、空気があったかいし、私好きです!」
先輩に感謝しなくては。
あのベンチは、安らぎの場所。
別に、何かに疲れてるわけじゃないけど、あそこはこころのオアシスって感じがする。
「アカン…恥ずかしい」
先輩は両手で顔を覆ってる。
「そんな照れないでください!あんないいベンチを作る才能は堂々と誇ってください!!」
そう言うと、先輩はゆっくり顔をあげて少しさびしそうな顔をした。
「あのベンチは捨てたもんや…」
「えっ?」
すてたもん?
どら○もん?
「それってどういう…」
「あ、雨あがったみたいや。俺これ作らなあかんから、帰るわ。今日はありがとうな陽依。じゃ」
と大荷物をさらっと抱えて去って行った。
なんで先輩あんな悲しそうな顔したんだろう。
小さくなっていく藤井先輩の後ろ姿を私は、ぼーっとただ見つめていた。