藤井先輩と私。
  




「これが、陽依の知らない陽依の過去についてよ」



ふと、隣を見ると藤井先輩はいなかった。


先に行ったのかなと思いきや、後ろを振り返ると、10メートル向こうで固まっていた。


相当ショックだったのかな。


「せんぱーい」


しかたなく先輩の方へ走る私。

なんて優しいの私!






「…悲しいな…その話。なんか話聞いてたら、涙止まらんなりそうやったから、止まって必死にこらえてたんやけど…やっぱ…やっぱ…我慢できへん!」



ダーーーーーッ


顔面から洪水のように涙があふれ出している。

なんだこのキモイ先輩は!

鼻水まで出てるし!



「切なくて切なくてたまらんわ。そういう話おれダメやねん」


アホだ。

こいつ真性のアホだ。

なに感動してるんだよ。






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