Truth
聖なる夜は赤に染まる
『2月10日火曜日。朝のニュースをお伝えします。』
チンッ。
トーストから食パンが飛び出し、それを右手で取って口に頬張る。
築40年は疾うに経っているボロアパートの寂れた階段を、206号室に住む信二は足早に降りた。
「うーさぶっ」
冬の寒さに凍え始めた手をポケットに突っ込み、壊れかけた郵便受けを覗き込む。
「本日も郵便物はなし、っと。」
それから また寂れた階段を駆け上がり、家に戻る。
テーブルの横にかけてあったショルダー式の鞄を肩にかけて、駅まで駆け出す。
6年間 働き続けている会社に向かう為、今日も満員電車に揺られる。
― まもなく1番線発車いたします
…プシュー
何気ない日常が今日も送られようとしていた。