Truth


「おはよう。あのさ突然だけど今日の夜、空いてないか?」

「夜?夜はダメ。ほら、今日はバレンタインだし。だから…彼氏と会うんだよねっ」

そう言って大事そうに袋を抱きかかえた彼女は頬を赤らめた。多分 袋にはチョコレートが入っているのであろう。

しかし北澤との約束の日が満月の今日なのだ。

「お願いだ。どうか今夜、俺と会ってほしい。」

信二は今井に頭を下げた。

信二は、これも全ては北澤の為ではなく、己が死にたくないが為だとは気づく事はなかった。

「なにそれ。あ、もしかしてチョコ狙い?義理だったらあげるよ。」

そう言ってポケットをあさり始めたので、信二は慌てた。

「違うんだ。今日の夜、彼氏と会った後で良い。〇〇神社に来てくれるだけで良いんだ。」

そう告げて、ちょうど来た電車に飛び乗った。

「〇〇神社…。遠いじゃないの。それにロマンチックでも何でもないわ。まぁ行くけど。」


今井の初恋の相手が信二だった事を本人は知らない。


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