Truth


今日は全く仕事が身に入らない事に信二は苛立っていた。

そればかりか凡ミスばかりしていた。

もうすぐ呼びだされ、うけるであろう上司からの説教の前に仕事場を離れ、

「信二、今日…」

春人の言葉も耳に入らないままエントランスまで走った。

受付の交代作業をしている今井に、『今夜11時半に』と短く伝えると、信二は再び走り始めた。

11時半まで残りわずか。俺のタイムリミットは全くといって良いほど残されていない。躊躇している時間などないのだ。


11時25分。白いコートに赤い袋を持った今井が神社に現れた。

鳥居まで信二はあとをつける。もしここで帰られては困るからだ。

今井が鳥居に着くと、信二はそれとなく声をかけた。

「…よぅ。」

突然 後ろから声をかけられたから驚いたのだろう。一瞬、肩が動いたが何もなかったように今井は信二の方に体を向けた。

「あの信二くんコレ。」

「?」

今井は赤い袋を信二に差し出した。


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