Truth


信二は一瞬 真顔になったが、また元の笑顔になり答えた。

「…北沢事件?あ、もしかして北沢未雨に春人が告られたやつ?今思えば、あんまし美人でもねぇよな。当時はチヤホヤされてたけどさ、こないだの同窓会で老けすぎてたっ!あれは事件だ事件。で、それがどうかしたか?」

春人は掴んでいた手を離すと、ため息まじりで言った。

「いや、やっぱりなんでもない。変な事聞いちまって悪かったな。」

「なんだよ変な事って?気になるし、教えろよ。」

「すまん。本当になんでもねぇんだ。」

「はぁ?」

春人はからっぽになった紙コップを握りしめながら言った。

「信二…。お前、本当に覚えていないんだな?」

信二はそれを取りあげて、自分のものと一緒にゴミ箱に投げいれた。

「だから何を?」

「…気をつけろ、信二。」

そう言うと春人は力なく笑った。

その意味が分かるのは まだ先の事である。

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