RedZone
ONE
「このとき彼の気持ちは――」
つまらない国語の時間、先生の退屈な説明はもちろん聞き流し。
しかしこの時期はそうはいかない。2週間後に迫る中間テストがあるからだ。
いつにも増して皆が真剣な顔をして授業を受けている。
もちろんわたしも例外ではなく、先生の言った些細なことをノートにとったりしていた。
しかしそんな空気もお構いなしでぼんやりしているのがアッシュグレーの頭をした目立つ男、はるか。
なにもはるかが勉強嫌いなのは今に始まったことではない。
入学してからずっと同じクラスで行動を共にすることも多いけど、彼が勉強しているところを一度も見たことがない。
天才というわけでもないし中学でも勉強をしてこなかったらしい彼が、一応中堅進学校であるここに入れたのは奇跡だと思う。
そんなことを考えていると、無意識に見てしまっていたらしい。
はるかと目が合った。
軽く睨みつけ、口をパクパクさせている。
おそらく、なに見てんだよ。
はるかの学力についてと返したら殺人視線を喰らうことは目に見えている。
なんでもないと口を動かした。
はるかが眉間にしわを寄せたままだけど前を向き直したことにほっとして、わたしも先生の話に再び耳を傾けた。