RedZone
ZERO
ゴムで束ねた長い髪をほどく。
飲食店特有の食べ物のにおいが香るのも慣れたものだ。
ロッカーから携帯を取り出して待ち受け画面を確認すると、時刻はもう7時を回っていた。
げ、と顔をしかめる。
今日はライブ見に行くって約束してたのに、見事に破ってしまった。
時間ぎりぎりだとは予想がついていた。
急なヘルプを頼まれるくらい忙しかったのだ、今思えば長引くに決まっていた。
忙しさを考えなかったあのときの自分に腹が立つ。
そもそもライブの招待なんて滅多にない。
あるとすれば大きめの箱のときとか、なにかの記念日やだれかの誕生日くらいだ。
今回、なにか重要なことがあったに違いない。
ああ、本当になんでバイト入れちゃったんだろう。
自分馬鹿野郎。最低だ。
言い訳にしかならないけどしないよりはマシだろう謝罪メールを送って、自分の浅はかさにため息をついた。