RedZone
「こんばんはー」
なにかあるときはいつも集まるカラオケ店。
馴染みのあるいつもの受付のお姉さんは、わたしのことをよく思っていない。
理由は簡単、RedZoneのメンバーに好きな人がいるから。
よくご飯を奢ってくれるいいヒトだと好かれている当人は言っていた、確かになかなか気前はいい。
だってここのフリータイム半額にしてくれてるんだし。
お金がない彼に少しでも楽させてあげたいから、とのこと。
わたしのことは容赦なく睨みつけてくるけど、ここは彼女の健気な乙女心に免じて気にせず接しよう。
「……いらっしゃいませ。部屋、203なんで。」
「ありがとうございます。いつもすみません」
「いえ。早く行ったほうがいいんじゃないですか」
「あ、そうですね。こんな夜にお仕事ご苦労様です」
「ど-も。…ではごゆっくり」
相変わらずわたしにだけクールというか、棘があるというか。
いや、これが噂のクーデレってやつ?
もう、素直じゃないんだからぁ。
そんな気持ち悪い妄想をしている間に2階に到着し、203のドアを開けた。
「おはよー!遅くなってごめん」
「まったくだ。30分も待った」
「ごめ…いったぁ!」
羨ましいくらいの長い脚で背後からわたしのお尻を蹴ったのは、ボーカルのはるか。
一言で表すならジャイアンだ。
もちろん、本人には口が裂けても言えない。
「今謝ろうとしたのに!ていうか普通か弱い乙女のお尻を蹴る!?」
「か弱い乙女のお尻?ハッ、この豚ケツのことか?」
「キャッ!2回も蹴った!ひっどい!サイテー!」
「そーだそーだ!はるかサイテー!女の子になんてことするんだ!」
「ありがと、陸。もっと言ってやって!」
わたしの、というか全世界の乙女の味方だろう陸。
メンバーの中で優しいのって陸だけなんじゃないか。
「あぁ?なんだ、テメーもケツにぶち込まれたいか」
はるかサマが、楽しそうに笑った。