RedZone
「あやめ、何にやにやしてんだ」
「せめてにこにこって言ってよ…」
「にこにこなんてかわいいモンじゃないだろ」
そう言って涼はわたしを嘲笑った。
せっかく涼のこと褒めてたのに、何よその言いぐさは。
カチンときたので少しばかり刃向わせていただこう。
「涼ってほんとかわいくないよね!」
「男がかわいくてどうする。逆にありがたいな」
「…イヤミ!」
「小学生並みの悪口しか言えない馬鹿よりはマシだ」
「ちょっと、それどういう意味!?」
「そのままだけど?」
ニヤリと浮かべた笑みは、明らかにわたしを馬鹿にするもので。
怒りのボルテージが急速に上がっていくのを抑えたのは、苦笑した陸だった。
「まあまあ、あやめも落ち着いて。ほらっ、これ。」
そう言って手渡されたのはCD音源と楽譜。
これで機嫌が直るわたしはつくづく単純だと思う。
「ありがとう。できたらすぐ連絡するね」
「うん、焦らずにじっくりでいいからね」
陸につられてにっこり笑ったわたしを鼻で笑っている人が一名いるけど、気にしない気にしない。