colorless
(いやいやいや!ただの自意識過剰だよ!やましいって訳じゃないけど、やましいところがあるから、敏感になってるだけ…っ!)


そう、それだけだ、と思い直して、今度は絶対に彼を見ないようにしながら、改札口を抜ける。








それが、彼という人を、私が初めて一個人として認識した時だった。














翌日の放課後、美術室に、彼は待ち構えていた。


「遅かったね、玉木さん?」


えぇっと、どうしよう。


絶対、昨日のことだよね…。



「玉木さん、いきなりだけど、昨日居たよね?」


すごい直球できた…!


「それで、ものすごく見てたよね?何あれ。視姦?」


「し、しか…?!」


「鹿じゃなくて、視姦。意外だなー、玉木さんってそんな人だったんだー」


とても素敵な棒読みをありがとう…!


「いや、ちがっ!し…しか、ん、じゃないよ…!」



くぅう。顔が熱い。しかも、変な汗まで出てきた…。


「じゃあ、昨日、あそこで何してたの?」





(…あ、まただ。)


ふいに、彼は、とても綺麗な表情をする。



顔の造作と違い、掴みたいのになかなか掴めない。




「…玉木さん、やっぱり視姦?」



はっと我にかえると、先程の彼の表情は消え失せていた。


「ち、ちが…っ!ほんとに、ほんとに違うんです!た、ただ、あの時の表情が、描きたいだけで…っ!!」


まさか、こんなことを言われると思っていなかったのだろう。



橋本くんは、榛の色をした瞳をまん丸とさせている。


(…あ、この表情も綺麗…)


「…描きたい?俺を?」


ぽつり、とまるで独り言のように呟いている。


「…ぇ?」



えぇっ!?わ、私、何を言ってるんだろう…!


確かに、描きたいって思うけど、それを本人に言うって…!


は、恥ずかしい…っ!



「あ、あの違うんです!いや、違うくないけど、でも違うんです!!」
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