colorless
あわあわとしながら、一生懸命に表現する。



描くのは、好きだけど、書くのは苦手な私の拙い表現を、橋本くんは、真面目に聞いてくれる。



「き、昨日、偶々、橋本くんを見かけたの」


「…そう」


「な、なんかよく分かんない、けど、橋本くん、一人でいて…」


「それで?」


「でね、なんだか、綺麗だったの…」


「…ふぅん」


「あ、顔じゃないよ!?」


「違うの?」


「う、うん。橋本くんが格好よいとかじゃなくて…」


「格好悪い?」


「あ、あの、ぇ、違うよ!格好いいけど、そこじゃなくて…」


「…続けて?」


「あの時、の。表情が、とても綺麗だったの…」


「表情?」


橋本くんが、首を傾げている。


「あ、ごめん。分かんないよね…!なんていうんだろう。あの時、橋本くんがしていた表情が、とても言葉で表すのが難しいくらい綺麗だったの…」


一生懸命、昨日の表情を思い出す。


「何色で表現すればいいのかとか、鉛筆で、どんな線を引けばいいかとか、全然分かんなくて。でも、なんだか見ていて苦しくなるくらい素敵だったから…」


心臓が耳元まできたように、どきどきと響く。



「だから、描いてみたいって、思ったの…」



言うだけ言って、じっと相手の表情を見る。



なんだか、まるで…


「告白されてるみたいだね…」


…っ!


「あ、まだ赤くなるんだ?すごいね。首まで、赤い。」


じぃっ、と見つめられると、恥ずかしい。


「見られて恥ずかしいの?…なんだか、どこまで赤くなるのか脱がして見てみたいなぁ…」



なんてことを言うの!


もぅ、いやっ!


耐えきれずに、ジリジリと後ろに下がる。


「あはは。ごめん、嘘、嘘。俺を描きたいんだっけ?いいよ」



あまりにも、さらっと言われたので、頭が追いつかない。



「…え?」
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