colorless
その視線の先にいる、見えない誰かが、羨ましい。



「…両思いじゃないの…?」



「違う…、けど。でも、なるよ。両思い」



あんまり、自信たっぷりに言われたから、びっくりしてしまう。



「…そう、なんだ」


「うん」






どうしてだろう。



胸が、苦しい。


目に、熱が集まる。



「…そっかぁ。」



なんだか、言葉が上手に喋られない。



胸の痛みで、鉛筆を持つ手すら震える。



きゅうっと、手に力を込めると、遠くで最終下校時間を知らせるチャイムが鳴り響いている。





「帰ろうか、玉木さん」



「うん。そう、だね」



のそのそと、帰る準備をする。



…良かった。チャイムが鳴って。



「玉木さん、家どこなの?」



「えぇーっと、橋本くんは、どこ?」



「ん?ないしょ」


「えぇっ!?だって、知らないと送れない…!」


「いいから、いいから」





先程までの表情とはうって変わった、明るい笑顔に、丸め込まれて、その日は結局送って貰えることになった。
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