CL




さっきまで思いっきり慌ててたのに、“勝ち負け”みたいな話をした途端にこれだ。会長は勝負事になると燃えるのだ。

別に狙ったわけではないのだが、我ながらしてやったり。

会長はキッと意志の強そうな猫目で俺を睨み上げ、深く座った足の間に両手をついて身を乗り出し、顎をツンと突き出して、つまりポッキーをこちらに差し出してきた。


「……え、なに、するんですか?」

「むむむ!むむむむ!」

「“む”しか言ってなくてもはや何語かわかんないんですけどとりあえず気持ちはわかりました」


受けて立ちます。


言って、ふふーんと笑ってみせる。会長がムカッとするのが手に取るようにわかった。

普段なら怒らせるなんてもってのほかなんだけど、この状況はもしかしたら俺の方が有利かもしれないので挑んでみたのである。

急かすように会長がポッキーを揺らすので、そんなにしたいのならばと俺は躊躇うことなく、彼女が咥えるポッキーの反対側にもう一度パクついた。

直後に、会長がポキッと口の中でポッキーを折った。なかなかの攻め体勢だ。上等である。

こちらも負けずにポキッと。会長よりも大きめに食べる。

会長はちょっと驚いて止まった。俺はその様子をまた一口食べながら上目で確認。目が合ったら睨まれた。

そして思い切ったようにぎゅっと目を閉じ、会長はさっきよりも大きくポッキーを食べ進める。

それで一気に距離が縮まり、目を開けた彼女は顔の近さにビビったのだろう、ひくっと喉を鳴らした。




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