CL




黒目がちな猫目が、一段と大きく開かれる。零れるんじゃないかってくらいに大きな目。

その目の下、彼女の頬は徐々に赤みを帯びていく。ゆっくりと、けれど確実に紅潮していく白い頬。

ヤバいって会長。俺の前でその顔は反則。

スッと、両手を椅子の肘掛けにつく。会長の逃げ道は全部封じる。もう後ろに引くという選択肢は俺の中から消えつつある。

どうする会長。このまま食べる?どっちが食べます?会長が食べないなら俺から行きます。その唇ごといただきます。

そんな思いを込めて、彼女の瞳をじっと見つめる。

会長は何度も瞬きをして、頬の紅潮と共に潤んできた瞳を逸らそうとする。けれど逸らしたら負けとでも思っているのか、少し逸らしてまた俺を見る。乗り出していた身も辛うじてそのままだ。

カリッと、会長が口の中でポッキーを噛む音。

なかなか手強い。さすが会長。だからって俺も引くつもりは毛頭ない。

これはもはやゲームではなく、バトルだ。でなければ駆け引き。

どちらが先に折れるか、攻めるか。

ガリッ。俺は彼女が食べたよりも倍の量を持っていく。

目と鼻の先に会長の可愛い顔。ミリの単位が隙間を作る。

さて会長。

どちらが先に、負けますか?


残念ながら俺は、負ける気なんてさらさらない。



――パクっ。



それは一瞬の隙。




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