CL
会長に背を向けようとしたら、慌てたような彼女の声が俺を引き留めた。
会長に引き留められたら止まらざるを得ない。
止まって、振り返り、会長を見下ろす。
俺を見上げる彼女の瞳は、恥ずかしさの中に怒りが混じっているように思えた。俺は一体この短時間で何をしでかしたというのか。いろいろしでかした気しかしない。
謝った方がいいのかなと思っていると、だんまりを決め込んでいた会長が先に口を開いた。
「……き、キミがだね」
「…はい、俺が」
「……本命チョコを貰ったなどと言うから…」
まさか。
「…そ、その、モチを妬いたのだよ悪いかっ!」
投げやりのように会長がそう言った直後に俺の腕は勝手に動いていた。
椅子に座ったままの小さな彼女を、しゃがみこんでぎゅーっと抱き締めた。壊れるくらいに、ぎゅーっと。
「……あ、やべ、思わず」
「…………っ!?」
「ってかもうフツーに我慢とかムリっす。だって会長すげー可愛いんだもん」
「だ、だからキミはわたしに向かってそう簡単に、か、かわいいなどと言うのはっ!」
「え、やめませんよ?え、だって本当のことですし」
「むがーっ!タラシなのだ!我が生徒会の書記は大変タラシなのだー!」
「や、俺会長にしか可愛いとか言いませんからホント。ってか会長しか見えてませんからマジで」
「…しょ、少年…キミはどれだけわたしを口説き落とせば気が済むの…」
あ、言葉づかいまで可愛くなった。