CL
ドアを開けたら、絵の具の匂いが鼻を突いた。
雨のせいで湿気が多く、いつもよりも匂いがキツイ気がした。
思わず眉をしかめてから見た、視線の先。
大きなキャンバスを見上げて佇む、セーラー服の後姿。
絵の具の滴る筆を手に握り、その手をだらんと垂らしている。
床は真っ青な絵の具で彩られていた。
「……アキちゃん」
その真っ青な床を見つめたまま声をかけたら、アキちゃんは我に返ったように肩を上下させた。
脊髄反射で、わたしの方へと顔を向ける。
わたしは視線だけを持ち上げてアキちゃんを見た。
アキちゃんの綺麗な頬には、青い絵の具がべったりついていた。
「…ミナミ、いつ来たの」
「ん、さっき。っていうか、それ……」
アキちゃんの問いに答えてから、わたしは青に染まった床を指さしてみせた。