CL

年の差編





これは夢だろうと思いたい。


「あ、キイチくんおかえりー!」

「…………」

「あははっ、変な顔!そんな顔も変わっちょらんねー!」

「…………」

「ってか寒いんやけど、部屋入らんの?」

「…………」

「おーい、キイチくーん!」


田舎っ子丸出しの方言を使いながら、何故か俺の部屋のドア前にしゃがみ込んでいる懐かしい顔に心の底からこれは夢だと思いたい。

むしろ願いたい。


「あれれ、もしかしてキイチくん、あたしが誰だかわかっちょらんの?ツキちゃんだよ?」

「……うん、それは、わかる」

「あ、喋った!声も変わっちょらん!」


そろそろ26歳になる人間がどうして声変わりなどしようものか。


「ってか仕事こげん時間まであるんやねー。社会人っち大変や~」

「……いや、待てツキコ。なんでお前がここに居るんだ」

「え、だってあたし、こっちの大学進学したけん」


マジかよ。





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