CL
「…で、なんで俺が住んでるマンションわかったんだ…」
「えー、それはおばさんに聞いたけん。久しぶりに会いたいな~っち思いよったし、ちょうどいいかなーって!」
「どういう風に“ちょうどいい”のか俺にはまったくわからない」
「まあ、いいやんいいやん!それよりもあたし寒いんやけどなあ」
「……もしかして上がって行く気かお前」
「え、上がったらいけんの?……え!?もしかして彼女居るん!?え、うそ!?同棲中やった!?」
「残念ながら独り暮らしですよ悪かったな!」
「……うわあ…」
「憐みの瞳を向けながらあからさまに“うわあ”とか言うんじゃない」
「えへっ!ってかキイチくんにはあたしが居るんやし、大丈夫やろ!」
「まだ言ってんのか…」
「もっちろん!まあこんな寒い場所で立ち話もなんですし、上がろう上がろう!」
「いやお前の部屋じゃねーよ」
「ずーっと待ってたお客人にその態度はなんですか、その態度はー」
カツカツとヒールを鳴らし、後ろに手を組んで頬を膨らませつつズイッとこちらに顔を寄せてくるツキコ。
まあたしかに、だいぶ前から待っていたのだろうと思われる妹分を、こんな夜中に一人で帰すのも気が引ける。
俺はワザと聞こえるようにため息をつき、ポケットから部屋の鍵を取り出してドアの鍵穴に挿し込んで回す。
ガチャリと開いたロックに次いで、ツキコの華奢な手がドアノブを握った。
なんの躊躇もなしに開けたドアに、「おじゃましまーす」なんの遠慮もなしに入り込んでいくツキコの図々しさは、昔から何一つ変わってない。
見た目は丸きり成長してて、一瞬見ただけでは誰だか把握できなかったのは否めないが。